更新情報:
- 2025.04.01
- News 2525.04.01 2025年2月に瑞雲舎から『ライオン』が出版されました。 お近くの図書館でリクエスト予約して、読んでみてください。 『ライオン』 文・絵 ウィリアム・ペーン・デュボア 訳 まさき るりこ 発行所 株式会社 瑞雲舎
<6月のおすすめの本>
ムギと王さま
6月のおすすめの本
『ムギと王さま』
エリナー・ファージョン作
石井桃子訳
岩波書店
作者まえがき
わたくしが子どものころ住んでいた家には、わたくしたちが「本の小部屋」とよんでいた部屋がありました。なるほど、その家の部屋は、どの部屋も、本の部屋といえたかもしれません。二階にあるわたくしたちの子ども部屋も、本でいっぱいでした。下へおりると、父の書斎も、いっぱいでした。また本は、食堂の壁ぎわをうずめ、そこからあふれ出て、母の居間や、さては、階段をのぼって寝室にまで流れこんでいました。本なしで生活するよりも、着るものなしでいるほうが、自然にさえ思われました。そして、また本を読まないでいることは、たべないでいるのとおなじくらい不自然に。
…
この本の中で、ストーリーテリングで聞いた事のあるお話「モモの木をたすけた女の子」「小さいお嬢さまのバラ」「コネマラのロバ」「ボタンインコ」「サン・フェアリー・アン」「しんせつな地主さん」「「がみがみシアール」と少年」
『ムギと王さま』
エリナー・ファージョン作
石井桃子訳
岩波書店
作者まえがき
わたくしが子どものころ住んでいた家には、わたくしたちが「本の小部屋」とよんでいた部屋がありました。なるほど、その家の部屋は、どの部屋も、本の部屋といえたかもしれません。二階にあるわたくしたちの子ども部屋も、本でいっぱいでした。下へおりると、父の書斎も、いっぱいでした。また本は、食堂の壁ぎわをうずめ、そこからあふれ出て、母の居間や、さては、階段をのぼって寝室にまで流れこんでいました。本なしで生活するよりも、着るものなしでいるほうが、自然にさえ思われました。そして、また本を読まないでいることは、たべないでいるのとおなじくらい不自然に。
…
この本の中で、ストーリーテリングで聞いた事のあるお話「モモの木をたすけた女の子」「小さいお嬢さまのバラ」「コネマラのロバ」「ボタンインコ」「サン・フェアリー・アン」「しんせつな地主さん」「「がみがみシアール」と少年」
<6月の詩>
バラッド詩集──イングランド スコットランド民衆の歌──
6月の詩
「サー・パトリック・スペンス」
ダンファリンの町のことです
王様が血のような酒を飲みながらたずねました
「わしの船をあやつれる
腕ききの船乗りはどこにいる」
王様の右手に控えた老騎士が
大声でいうことには
「サー・パトリック・スペンスこそ
いちばん腕ききの船乗りでございます」
王様は長い手紙を書いてから
自らそれに署名して
そのとき浜辺を歩いていた
サー・パトリック・スペンスに送りました
ひとこと読んでサー・パトリックは
大声あげて大笑い
ふたこと読んだそのときに
涙が流れて眼がみえません
「おお 誰がしたのかこんなこと
ひどいことをしてくれたものだ
ときもあろうにこんなときに
海に出よとはなにごとだ
「急げ 急げ みなのもの
われらが船はあす出帆だ」
「何をおっしゃる 船長
どえらい嵐がきますぜ
「昨夜みたのは片われ月
陰を抱いた片われ月
海へ乗り出しゃ 船長
どえらい目にあいますぜ」
スコットランドの大宮人がお嫌いなのは
コルクの靴がぬれること
けれどもそのお遊びがすむまえに
お帽子がぷかぷか波に浮かびます
奥方様がいついつまでも
扇かざしてすわるでしょう
サー・パトリック・スペンスが
港に帰るのを待ちわびて
奥方様がいついつまでも
金のかんざし髪にさして立つでしょう
いとしいひとを待ちわびて
二度と会えはしないのに
アバディーンへ アバディーンへいたる途すがら
五十尋の海底に
サー・パトリック・スペンスは眠ります
そして足許にはスコットランドの大宮人
『バラッド詩集──イングランド スコットランド民衆の歌──』
藪下卓郎・山中光義訳
音羽書房
「サー・パトリック・スペンス」
ダンファリンの町のことです
王様が血のような酒を飲みながらたずねました
「わしの船をあやつれる
腕ききの船乗りはどこにいる」
王様の右手に控えた老騎士が
大声でいうことには
「サー・パトリック・スペンスこそ
いちばん腕ききの船乗りでございます」
王様は長い手紙を書いてから
自らそれに署名して
そのとき浜辺を歩いていた
サー・パトリック・スペンスに送りました
ひとこと読んでサー・パトリックは
大声あげて大笑い
ふたこと読んだそのときに
涙が流れて眼がみえません
「おお 誰がしたのかこんなこと
ひどいことをしてくれたものだ
ときもあろうにこんなときに
海に出よとはなにごとだ
「急げ 急げ みなのもの
われらが船はあす出帆だ」
「何をおっしゃる 船長
どえらい嵐がきますぜ
「昨夜みたのは片われ月
陰を抱いた片われ月
海へ乗り出しゃ 船長
どえらい目にあいますぜ」
スコットランドの大宮人がお嫌いなのは
コルクの靴がぬれること
けれどもそのお遊びがすむまえに
お帽子がぷかぷか波に浮かびます
奥方様がいついつまでも
扇かざしてすわるでしょう
サー・パトリック・スペンスが
港に帰るのを待ちわびて
奥方様がいついつまでも
金のかんざし髪にさして立つでしょう
いとしいひとを待ちわびて
二度と会えはしないのに
アバディーンへ アバディーンへいたる途すがら
五十尋の海底に
サー・パトリック・スペンスは眠ります
そして足許にはスコットランドの大宮人
『バラッド詩集──イングランド スコットランド民衆の歌──』
藪下卓郎・山中光義訳
音羽書房
<6月の俳句>
サンコウチョウのメス Photo by WAKO
アジサイ Photo by Maki
倉の中 ずらり並んだ 燕の巣
井伊恒子
井伊恒子